今回は欧米のギャラりー(商業画廊)のランキング、格付けについて説明します。

世界最大級のアート・フェアなのに、超閉塞的なアート・バーゼルのお話

 東京画廊をなぜ私は日本のトップギャラリーと称するのか?

 まず、この30年はロックミュージックなどの音楽産業と現代美術・アート業界の地位が完全に逆転した時代であると言っていいでしょう

 その転機となったのが音楽の複製技術の進歩です。

 CDが売れなくなり、音楽によってはアメリカンドリームを達成する事が難しくなり音楽の才能に恵まれた人が音楽業界も目指さなくなった

 逆に美術品は『現品のみの1点もの』という複製芸術とは真逆の性格が、世界の大富豪や新興富裕層の投資意欲や購買意欲を急激に刺激していきました

 アートにしてもITにしても富を生み出す業界は優秀な人材を引き寄せますよね。

 このアート作品の価格高騰を作りだし、新人アーティストの売り出しをしてきたのが有力画商=ギャラリストキュレーター(展覧会企画者)、そして有力なコレクターです。

ダミアンハースト 生者の心における死の物理的な不可能さ
ハースト 『生者の心における死の物理的な不可能さ』
 この30年間続いた、現在さらに加速しているムーブメントのチャンピオンたる現代美術家がイギリスのダミアン・ハーストです。

 彼はイギリスではかつてのクィーンのようなロックスター並の人気を誇っています。

 イギリスはかつてない現代美術人気となり、年末に行われるターナー賞の受賞発表式はかつての『日本レコード大賞』のように全国放送され全国民注目の恒例行事になっています

 かつてマドンナが受賞者発表で「いい作品も悪い作品もない。Fuck you motherfucker(くたばれ糞野郎!)」と言って物議をかもし、世界に報道されたこがあります。

 憶えておられる人も多いと思います。

 ハーストなどのアーティストを売り出したのが、イギリス人コレクター、チャールズ・サーチですが、結局ハーストは、現代No1の画商であるラリー・ガゴシアンに口説かれ取扱い作家となって移籍しました。

 こうした剛腕ぶりにより、美術関係者はガゴシアンを『人食い鮫』と呼んで恐れています。

 さてガゴシアンのように世界各地に画廊を構えるギャラリーをメガギャラリーといいます。

 他にはこのページにあるようなギャラリーがあります。

 これらのギャラリーが一堂に会して即売会を行うのがアートフェアですが、その最高峰がスイスのアート・バーゼル。アート・バーゼルは他にマイアミと香港でも別日程で開催されてます。

 その本家であるスイス開催のアート・バーゼルに出展できるギャラリーの数は300程

 厳しい審査があり、その審査基準と選考理由は公表されていません。

 本家アート・バーゼルに出展できるギャラリーこそが、欧米の価値基準で得られた世界のベストギャラリーなのです。

 このアート・バーゼルにここ6年、連続して出展できた日本のギャラリーは二軒しかありません。

 『もの派』を育てた東京画廊と、元々はアラーキーこと荒木経惟杉本博司などの写真家を企画展示して取り扱ってきたタカイシイギャラリーです。
 
  この2画廊以外に毎年選ばれる画廊は一つか二つ。

  最近は東京画廊と同じく『具体美術・もの派』を出展するタケ・ニナガワが選ばれています。

TOYOTA F1マシン 
写真  いってみればアート・バーゼルは自動車レースのF1のようなものです。

 ですから、東京画廊を老舗のTOYOTAとするなら、タカイシイは創業社長が経営していたHONDAに例えられでしょう。

 各画廊の取扱いアーティストはF1ドライバーに当たります。

 村上隆や奈良美智は、今やガゴシアン取扱いの画家です。

 ガゴシアンはメルセデスベンツと言って良いでしょう。

 ですから、私は出場していないけれど、いつドライブシートを獲得して参戦できてもおかしくないカーレーサーということになります。

世界のアートサーキットと国内・東南アジア市場

アートにとって価値とは何か 単行本 表紙 日本には、東京芸大油画科卒の会田誠や山口晃、池田学を売り出したミズマアートギャラリー、オンラインネット販売の最大手で最近ではKyneさんなどを売り出しているGALLERY TAGBOAT。

 デビッド・ホックニーを最初に日本に紹介し、船越桂や小林孝亘を売り出した西村画廊などの有力画廊があります。

 どの画廊も、スタンスを海外よりも国内に置いていると言っていいでしょう。

 ミズマアートギャラリーの三潴末雄は、東洋の片隅の日本という国の若手アーティストの、日本人特有の優れた美術センスをの優位性を主張して『日本土着の弥生美術』の概念を提唱し、世界アートサーキットの価値観に挑戦を続けるという姿勢を取って来ました。

 どちらを目指すか?については、山本代表も話してくれましたが、各画廊が『どういうポジションに身を置くことで最大限の活躍と利益獲得ができるのか?』ということでの違いだと思います。

 私は三瀦さんも、西村さんも素晴らしい鑑識眼の持主だと思っています。

 ただ、欧米で高く売れるかどうか?という違いがあります。

 村上隆がもう10年以上前に小山登美夫さんに「ガゴシアンとかと比べたら小山登美夫はB級なのだよ!」と言ったそうですが、それは同じ意味ですね。

 そして、欧米で高く評価されるには、村上隆も口を酸っぱくして言って来たように、「世界の美術史にどのように、新たにイノベーション=革新をもたらしたか?」という価値基準に強くコミットできなくてはいけない。

 ピカソはキュビズムを作り、村上・奈良は『日本のアニメを西洋の美術と合体させた』
 
 そして私は『絵画と音楽の物理学的な共通方法を見つけ出し、絵画と音楽を合体させた』のです。

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