今日は。
札幌在住のパステル画家、横田昌彦です。
前回の作品から、だいぶ日にちが経ってしまいましたが、新作が完成しました。
題名は『K2 西壁 ピオレドール』です。
NHKではここ数カ月、何度も番組『K2 未踏のライン 平出和也と中島健郎の軌跡』が放送されていますが、登山界の最高栄誉であり「登山界のアカデミー賞」とも呼ばれる『ピオレドール賞(金のピッケル)』を、「K2 西壁」に挑む前に3度受賞していた平出和也さんと、2度受賞していた中島健郎さんが、2024年に前人未踏で世界で最も登るのが難しいと言われるK2の、誰も登ったことのない西壁に挑戦し、氷とともに1000メートル下に滑落し亡くなられました。
ご冥福をお祈りいたします。
お二人は、亡くなられて後にすぐ、2024年度のピオレドール賞をパキスタンのティリチミール登頂で受賞されました。
凄いですよね。
このお二人は、間違いなく登山界のトップアスリートであったと言えるでしょう。
カーレースでいえば天才アイルトン・セナのような!
私はNHKの番組ネット広告でこの事故を知り、それ以来さまざまなことを思案しながら、この作品を描きました。
大きさは、いつものように 4/6判サイズ(1091mm×788mm)のマーメイド紙に、ソフトパステルで描いています。
作品の意味は、いつもの通り皆さんが自由に考えてください。
というか、正直なところ、私自身にも決められないのです。
それは、21世紀を代表するクライマーである平出和也さんと中島健郎さんの、この挑戦の是非と意義が、ご本人たちには分かっていたのか? いや、やはり誰にも分からないのか?
著名な登山家の野口健さんが、この事故の背景について意見『最強登山家の2人のK2滑落 野口健氏の警鐘』を述べられています。
この意見には、共感するところが多いですが、皆さんはどう考えますか?
お二人と何度も共に山に登った友人の大石明宏さんも『平出和也のK2西壁遭難と20年前の想い出』というエッセイを書かれています。
こちらも是非参考になさってください!
モチーフの薔薇は、私が今年育てた薔薇です!
この絵には薔薇がモチーフとして描かれていますが、それぞれ、ほぼ私が育てている薔薇です。種類は以下の通りです。
- **青みがかった藤色:ノヴァーリス**
名前はドイツの有名な詩人から。意味は新開拓地を示すそうです。
数年前まで「青薔薇では耐病性・耐寒性・耐暑性で最強の新作」とされ、それまでの「青薔薇は弱い」という常識を覆して世界の育種家を驚愕させた薔薇です。
有名な『岩見沢バラ園』でも最強健種と謳っている薔薇です!
- **黄色:ゴールデン・メダイヨン**
大輪の黄色薔薇で、黄薔薇は「耐病性と香りの両立は困難」とされてきましたが、これはその中で最も耐病性・耐寒性に優れた品種です。
- **赤:ラブ**
剣弁高芯咲きで、内側が白い薔薇。
アメリカのウォリナーによって作出された品種です。
耐病性・耐暑性・耐寒性に特別優れているとの評価はされてきませんでしたが、15年ほど前に私が数株購入した薔薇の中で唯一生き残った薔薇です。
鉢替え時の知識の無さでの根の傷み、猛暑、病気、越冬時の乾燥などあらゆる困難をものともせず、鉢で15年間生き続けてくれた、実感として「最強の薔薇」です。
札幌近郊の薔薇園でもたくさん咲き誇っており、札幌の気候に合っているのかもしれません。
風にそよぎ、明るく柔らかな光を浴びた、鉢に根を張ってたくさんの花を着けたこの薔薇を見るたび、ジョン・レノンが小野ヨーコに捧げた『LOVE』という曲を思い出します。
世の中のラブソングなるものは、どれもこれも夢物語の空想・ファンタジーの作りのチャチな流行り唄がほとんどですが、この曲は詩も極限まで削ぎ落とされかのようにシンプルで、かつ深い意味を持ち、さすがはジョン・レノン。
素晴らしい出来栄えですね。
これもイマジンのように即興で作ったのではないでしょうか?
ラブソングの史上No1、傑作ではないでしょうか?
ラブソングですが、50歳、60歳になって「君が好きだ!愛してる」だの「君が全て」だの『デート』だのも無いのではないでしょうか?
大江千里さんが「後5年もラブソングなんか作ってられない」とニューヨークに渡ってジャズ・ピアニストになったのは賢明だと思います。
- **画面中もっとも大きい赤紫の薔薇:ムンステッド・ウッド**
2000年代、それまでの四季咲き性と美しさ、花の大きさ、香りを追求して改良され病弱となった薔薇にノイバラやハマナスに近い一季咲き性であるオールドローズ、すなわち薔薇の原種の強靭なDNAを掛け合わせることで、耐病性を強めかつ、オールドローズ譲りのシュラブ咲きの品の良さで一世を風靡した、イギリスのデビッド・オースチン作出の薔薇です。
オースチンの薔薇は「イングリッシュ・ローズ」と呼ばれますが、この品種は昨年で廃盤になったとの情報もあります。
ムンステッド・ウッドはイングリッシュ・ローズの中でも、もっとも深い赤(クリムゾンレッド=深紅)の薔薇です。 さすがはオースチン。他の育種家の薔薇とはまったく異なる成長の仕方と咲き方をして、毎日私を驚愕させます。
しかも、ダマスク香という最高級の強香を持ちます。
蕾が開くにつれ、赤から赤紫へと、さまざまな色に変化していきます。 そして、季節を問わず次々と咲いてくれます。 育種家にイングリッシュ・ローズファンが多いのも納得です。
名前は『イングリッシュ・ガーデン』の創始者の女性の名前からです
- **白と黄緑色の薔薇:わかな**
緑がかった色合いで、内側に向かうほど白くなります。このような緑薔薇はいくつかありますが、これも非常に魅力的です。
- **ベージュ色の薔薇:ラり・デ・ガゼリ**
黄薔薇同様、耐病性と香りの両立した薔薇、特に耐病性のある薔薇を作るのが難しいと言われて来た茶系薔薇で、もっとも耐病性・耐寒性を持つ薔薇の一つです。
花名は、女性ドライバーたちがフランス~モロッコを走破する”ガゼルラリー”から。今、欧米で最も勢いがあり、薔薇苗の販売業者が一番ぐらいに販売に力を入れているフランスのデルバールが2021年に作出。
デルバールはここ数年、耐病性のある薔薇の作出に力を入れており、さらに色んな育種家が作出した、色んな種類の人気品種、例えばイングリッシュ・ローズにそっくりの薔薇を作出することにも力を入れており急速に人気が高まっています。
この花の特徴は大輪であること。
咲いた花の大きさと色彩が見事です。
茶系バラはヨーロッパではあまり人気が無いそうですが、天才育種家の木村卓巧さんが『是非、残したいデルバールの薔薇』と語っています。
同感ですね!
花の形も、ほほ今年実際に咲いたものを描いています。