今日は。

北海道、札幌市在住のパステル画家・デジタルアート作家・ジークレー版画家の横田昌彦です。

前回の第2回目では使用しているパステルの名前とその優れた点について解説しました。

今回はパステル専用紙であるマーメイド紙やミタント紙を水張りして板パネルや仮張りに張る作業と、仮張りから板パネルに表装する方法について解説します。

ところで『水張り』って何?という方が多いと思います。

これは日本画では必ず行う作業なのですが、皆さんは学生時代に水彩画を描いた経験をお持ちですよね。

描いていると必ず紙が水で伸びて表面がデコボコになりますよね。

日本画や水彩画でも、これを防ぐために最初に紙に水分を十分に吸わせ繊維を伸ばし、これを板パネルや仮張りというパネルに張って、その後に制作を始めるのです。

こうするとデコボコになりません。

でも「えっ?パステル画って水を使いませんよね。何で水張りが必要なんですか?」と疑問に思うと思います。

実はパステル専用紙を画板に画鋲で止めて描くと、画鋲で四隅に穴が空いてしまいます。

「では、紙に水を吸わせず直接板パネルに糊で張れば良いのでは?」と思いますよね。

これも駄目なんです。

描いているうちに、パステルで紙を何回も擦る事で紙の繊維が伸び紙が袋状に膨らんでしまい紙全体が下に垂れてしまうのです。

「では、木工用ボンドでがっちり全面を板パネルに張れば良いのでは?」と思いますよね?

これも駄目なんです。板の色素が紙の裏面に染み出て表面に浮いて来ます。

さらに古くなって、板自体を取り替えたい場合もがっちり貼られているため剥がせないのです。

ですから、私はパステル専用紙も日本画の和紙と同じように水張りします。

この方法は今までお話したような事を全部一度はやってみて駄目で、結局、札幌の大丸藤井セントラルさんの社員に依頼してホルベイン工業の技術の方に聞いていもらって教えていただいたものなのです。

大丸藤井セントラルさんに感謝です。

なので、このやり方でパステル用紙の水張りをやっているのは恐らく日本では私一人だと思います。

このやり方は100号などの大画面でも使用できるというか、大画面に紙を貼りたくて教えていただいた方法です。

パステル画を板パネルまはた仮張りに水張りする手順

パステル画を板パネルに水張りする方法の画像
まず、紙に充分に水を吸わせます。

私はバスタブに10cm位水を張り、そこに紙を破損しないように注意深く漬けます。

この時、紙が大きい場合は水位を深くしたり、シャワーで5分、10分両面に水を掛けます。

数十分間水に漬けたら、紙から水がぽたぽた垂れないように水を軽く切ってアトリエに運びます。

十分に水を吸わせ繊維の伸び切らせるのがコツです。

繊維が伸びたらパネルにかぶせます。(図の2番目)

繊維が伸びるのでパネルが紙のサイズと同じでも4辺から紙が5mmほどはみ出します。

板パネルは私は自作していますが、パネルの大きさは使用する紙の大きさと同じか縦横の長さをそれぞれの辺で5mmぐらい小さくします。

最後にはみ出した部分を水張り用の『ミューズテープ』で四辺をパネルの側面で止めます。

しばらくすると乾き始めるので、しわの寄りぐらいをみてしわがなくなるように中心部から外になぞり、ドライヤーをかけ各部分の乾き具合を調整します。

数時間して乾燥したら図のように出来上がりです。

このようにパステル画でも、紙を水張りして使用します。

これは水彩の場合も、アクリル絵の具で紙に描く時も同じです。

◆ミューズテープはこちらをご覧ください。このテープは塗らすと剥がせます。乾くと接着します。
  
次の画像にあるような仮張りの場合は、紙を紙張りに貼った後、各辺の縁の5mmぐらいの部分にミューズテープを貼ります。

乾いてくると、ミューズテープと紙が分離することが多いので、ミューズテープをさらに上に貼ったり、はがれた部分のミューズテープを取り替えたりして綺麗に張られるように調整します。

ここら辺は、やはり経験が必要ですね。

仮張りから完成した作品を剥がして板パネルに貼る

仮張りから板パネルにパステル画を張り替える仮張り用パネルに張って制作し完成させたパステル画を表装する手順です。

作品を張るための木製パネルを自作し、作品を張るための和紙を障子のりで張りました。

のりは全面ではなく紙の四辺に主に塗って張り付けます。

和紙を張って乾かしたら、慎重に作品を仮張りよりカッターナイフで四辺を切ってはずします。

和紙に格子状にのりを塗り、その上にそっと作品を載せ、やさしくトレーシングペーパーでのりのついていいるところをなぞります

こうするとデリケートなパステル画の表面を傷付けなくてすみます。

これで表装は完成です。

ヤマトのりではなく障子のりを使うのがポイントです。

なぜならば、のりの部分を水に塗らせば簡単に作品を無傷で剥がせるからです。

作品を紙に、のりのべた塗りで貼り付けていないので、外したいときには作品と和紙の隙間をナイフなどでそっと切れば簡単に外れます。

これらの技法はほぼ全て日本画の技法を応用しています。

長年やっているので慣れてはいますが、パネルの制作は時間が掛かりますね。
 
この日は2枚制作で1日掛かりましたね。

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