◆絵画の鑑識眼を養うのは、陶芸や料理と同じで、とにかく本物
良いものの実物をたくさん観る事です。
陶芸も美術ですが、青山二郎などの本を読んだりして努力した
ところと、私が毎年通う『江別 陶芸市』で、私が購入した作家
が次々と売れっ子になっていきました。
絵画も同じでセザンヌやカンディンスキー、クレー、ルノアール
などの歴史に名を残す巨匠の作品の実物をたくさん観て、なぜ
これらの作品が時代の審判を得て高い評価を得ているのか?
何が優れていて、何が欠点なのかを徹底的に考えることです。
もし価値が分からない作品があれば是非、ページ最後にある
問い合わせ先から質問してください。
◆これを踏まえないで、いきなり現代の、特に若手作家の絵を
観ると駄目です。
料理人を目指すのと同じで、「幼少期から、本当に良い素材
美味しい料理を食べて育たないと舌が育たない。」
と言われますが、それほどでもないつまらない作品を
観ても「面白い。自分にピッタリだ。共感できる」と
ファンになってしまう訳です。
結果、お金をはたいて購入したコレクションも10年後
20年後には二束三文となってしまう訳です。
◆これはミズマアートギャラリーの三瀦さんがいう通り
で、歴史に残る作家がそんなにたくさんいる訳がない
のです。
これは歴史的な事実ですよね。
◆村上隆は「自分は天才ではないが、天才は本当に
一握りで稀だ。
だからアートの世界は、その天才を持ち上げずに
その他大勢の努力家の秀才によって利益を得るシステム
になっているのだと日々思う。」
と言っていますが、その通りですね。
私は?と言えば私は天才だと思っています。
昔から美術の教員にもそう言われて来ましたし。
ただし、徳川家康のようなもので苦労して苦労して
やっと花を咲かせるタイプの遅咲きの天才だと思います。
ですから、私のような天才は世界のアート界にも
村上隆にとっても、一番世の中で評判を高めてほしくない
画家でしょうね。
村上隆がいうように「凡人は天才と対戦すると一刀両断で
手首を切り落とされるから会いたくない」からです。
◆この美術史を知った上で次はとにかくたくさん
画廊やアートフェア、アート雑誌などで現代の作品を
観て理解することです。
東京画廊の山本豊津代表は
「私は画家ではないけど、とにかく絵は誰よりも枚数
観ているんだよ。」
といって私の作品を論評して下さいましが(詳細はこちらで)
山本さんは
「画商やコレクターをめざすなら絶えず5000枚の絵は
頭の中にストックしておかなくてはいけない。」
と大学の講義で言っていました。
◆過去の巨匠についてい知識ならターナーが、クレーが
マックス・エルンストが。と美術関係者が話してきて答えられ
ないと
「なんだこいつは基礎的な知識もないのか?」
と思われてしまいますし、戦後の欧米のアーティストなら
前澤友作が集めているバスキアやその友人で一時期
ピカソの再来と持ち上げられたジュリアン・シュナーベル。
それより若い世代ならこの20年間、世界のトップをはって
きたダミアン・ハーストとジェフ・クーンズ、同年代の
女性作家であるトレーシー・エミンやシンディー・シャーマン
ぐらいは知っておくべきでしょう。
日本の現代作家なら海外でも注目を浴びて来ている
井田幸昌、松山智一、kyne、小松美羽、ロッカクアヤコ
といった画家の仕事は詳しく知っておくべきだと思います。
◆そうでないと、大物美術関係者と話をしてもコミュニケーション
が取れなくてチャンスを逃してしまいます。
コレクションするのでもオークションなどでの価格の
相場や、どの作品が有望かなどからきし分からないでしょう。
◆これは音楽史を知らずに作詞・作曲しているミュージシャン
のようなものですが、音楽ならそれで良いのです。
以前も話たとおり、音楽は表現スタイルの革新=イノベーション
に重きを置いていないからです。
◆さらに、美術館にトイレの金隠しや自転車の車輪を展示
しようとして物議をかもしたマルセル・デュシャンが決定的な
出発点となりましたが、美術は
『人間の新しい能力の使用方法や、それまでの考え方の枠組みを
脱出して、新たな頭脳の使い方や思想を呈示する。』という
重要な働きがあります。
デュシャンは何をしたのか?
「美術家は絵画や彫刻という既成のジャンルに囚われるべき
ではない。
あらゆるアイデア、あらゆる試み、あらゆる思想がアート
なのだ!」
と主張したのです。
これが今日のコンテンポラリーアート(概念芸術)、つまり
現代美術の起源となります。
特も美術はこの新たな思想を呈示することを音楽よりも
はるかに得意とし、異分野とコラボレーションして今までに
なかった表現を実現することが得意です。
ヒト・シュタイエルは私の論文もインタビューもブログも
著書も政治活動もアートであることをまざまざと証明しました。
ですから、「良いアイデアを閃いた」と思っても、すでに
誰かがやっていたことなら、日本では評価されますが、
欧米の評価基準では評価はゼロなのです。
この意味でも美術史を知るべきなのです。
◆以上のような知識がないにもかかわらず後世に残るような
絵を描くアーティストも数は少ないですがいましたし
これからも出てくるでしょう。
◆それでも時代を代表するようなアーティストやコレクター
をめざすなら、腰をすえて精一杯勉強すべきではと思います。