〖詩に向かって(様々な起点)〗 オクタビオ・パス作
幻想の仮面を剥ぎ取って、敏感な中心に槍を突き刺すこと。
つまり噴火を引き起こすことだ。
臍の緒を断ち切り、母を完全に殺すこと。
それは近代の詩人がみんなを代表しみんなの代わりに犯した犯罪。新しい詩人の義務は<女>を発見すること。
話すために話し、絶望した女から音をいくつも引き出し、蠅の飛行が語ることを口述して、真黒にすること。
時間が真っ二つに割れる。
決死の飛躍をする時だ。
◆本日完成した新作です。題名は『決定的飛躍 salto mortal』です。
決定的飛躍という観念はメキシコのノーベル文学賞作家オクタビオパスのものです。パスの『出発』という詩は『決定的飛翔』について表現してたものです。今回の新作はイラストレータとフォトショップで制作しています。
◆パスの言葉を少しだけ引用しておきます。
「人間は他者になる時実現され、成熟される。他者になることによって、この世界に落ちる、あるいは転落する以前の、つまり自我と<他者>に分裂する以前の、彼の本源的存在が回復され、再び獲得される。」
〖出発〗 オクタビオ・パス (抜粋)
幾度となく徹夜を繰り返し、三段論法をさんざんかじり、多くの廃墟と荒れ果てた理性に住んだ揚句、僕は空中に飛び出す。僕は接触を求める。
そしてその飛び板から、目を開けたまま、真っ逆さまに身を投げる。
どこへ向かって?井戸、鏡、糞に向かって(おお、美よ、人を拒む生硬な輝きよ!)
違う、落ちる、他の瞳の中へ落ちる。瞳の水、黄色い川、緑の川、ああ、果てしなく落ちていく、半透明の瞳の中へ、突撃ラッパを待ちながら向き合う二つの槍の森のような。
二つの眉毛の列の間に・・・・。
僕は川下へ落ちていき、闇の中に戻るのだ。
君は夜の鳥の首に巻きついた陽光の首飾り。内なる瞳の空で二人の翼を広げよう。
双頭の鷲、ダイヤモンドと鳴き声の長い鋸を引いた彗星を。
燃えるのだ。八つの腕を持つ燭台よ、歌をうたう生きた木、絡み合った根、もつれた枝、珊瑚と燃え上がる火の小鳥たちが鳴く杯よ。何もかも自分のものでありながらもはや別の存在となる。
そして僕は、美しい言葉、愛の言葉の重さを、この今という秤にかける。
ここでもう一つだけ余分な言葉があれば、僕たちは時の向こう側に潜ることが出来るだろう。