2020、2021年に欧米で注目されたアーティストは誰か?世界アートを俯瞰しての最新情報をお届けします!

2021年上半期 1980年以降に生まれたアーティストのオークション落札総額トップ5という記事をご紹介いたします。

記事はこちらのサイトでご覧いただけます。

今回はその詳細を解説したいと思います。

自殺した韓国系アーティスト マシュー・ウォン (Matthew Wong)が注目された!

1984年生。 2018年のニューヨークで初個展(「Karma gallery」2019年11月〜2020年1月)で注目度が頂点に達しましたが、彼はそのニューヨーク個展の数週間前に自殺を遂げてしまいました。

作風はデフォルマシオン(形の変形)の効いた、静謐な感じの風景画です。

デビューのきっかけは、彼がFacebookに作品を投稿していてWhite Columns Galleryのキュレーター兼ディレクターであるMatthew Higgsと出会い、ニューヨークと香港のギャラリーで展示を行うようになったことです。

キュレーターのジェリー・ソルツが、Karma Gallery(カルマギャラリー)でのウォンの2018年の個展を「私がここしばらく見てきた中で最も印象的なニューヨークのソロデビューの一つ」と述べるなど、急速に注目を集めていきました。

人種差別やジェンダー問題、性暴力問題がアートでも高い注目を集めました

日本の伊藤詩織のレイプ疑惑などもあって世界的に盛り上がったMeeToo運動とジェンダー問題。

特にデレク・チョーヴィンによるジョージ・フロイド黒人殺人事件などでの人種差別抗議もアート界に大きな影響を与えました。

黒人女性の魅力をテーマにする黒人アーティスト アモコ・ボアフォやセクシュアル・マイノリティの若いブラウン系男性の想像上の生活を描くサルマン・トゥール (Salman Toor)らが台頭しました。

ロッカクアヤコが台頭するが、人気は香港オークションに偏っている

ロッカクアヤコさんが台湾コレクターに特に人気なのは、小松美羽さんとよく似ています。

これは、台湾や香港などのアートファンの場合、とにかくアニメを取り入れた作品を好む傾向があるからでしょう。

村上隆が、デビューから一貫して日本のアニメファンや美術関係者に『日本アニメのパロディ、まがい物』と酷評されて余り人気が出なかったのも、アニメが日本のお家芸なのでファンの眼が肥えているのが原因だと思います。

ただ、村上隆の場合は、確信犯でパロディ的に作品の質を落としてきた面があるのは否めないと思うので(白人のプライドの刺激しないようするため)、彼の「作品のクオリティーが低い」と決めつけられないのではと思いますが。

他に欧米のオークションで日本人画家は草間彌生、さらに奈良美智がさらに高額で取引されるようになりました。

全体として、中堅や有名作家は玉不足の状況というのでその影響もあるのでしょう。

日本で注目されている若手作家

日本では、私が鴨居怜やジャン・デビュッフェの影響を強く受けてると推測する東京藝術大学、油画科卒の井田幸昌さん。

ニューヨークの壁画アートで情熱大陸でも紹介された松山智一さんが台頭する若手作家といって良いでしょう。

ミズマアートギャラリーの三瀦さんはツィート

「日本のアートマーケットには新たな流行が生まれている。最近の若手のコレクターの間では、「フルハウス」と呼ばれる作家のコレクションリストがあるようだ。

井田幸昌、KYNE(キネ)、小松美羽、TIDE(タイド)、松山智一。この5人の作家の作品を揃えるのがトレンドでオークションでも高値で購入している。」

GalleryタグボートがスカウトしたKyneさんや東京芸大 最強世代の新海誠作品風の油彩画を描く深澤雄大くん、ミズマアートギャラリーと契約する『愛☆まどんな』、『岡本 瑛里』さんも注目されています。

美術論文や出版物、政治活動がアートとなったヒト・シュタイエル

日本で映画制作を学んだドイツ人アーティストのヒト・シュタイエルが 2017年に、美術界で影響のある雑誌『ArtT Review』誌が毎年発表する「トップ100」において、女性アーティストとして初めて1位になりました。

彼女の作品を展示しているギャラリーK.O.W.の共同経営者であるアレクサンダー・コッホ氏は、「現代アートの美学は、彼女抜きには考えられません」と語っています。「彼女は、多くの文化、特にデジタルの文化を融合できる視覚言語を発見したのです」 と。

シュタイエルの活動は多岐にわたりますが、彼女はまず第一に、自分自身を映画監督として見ています。

ミュンヘンで生まれ育った彼女は、カメラマンとしての訓練を受けた後、日本と故郷の両方で映画制作を学びました。1980年代後半には、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督のアシスタントを務めます。

古典的なドキュメンタリー映画作家を目指したが、なかなかうまくいかなかったそうです。

彼女はデジタルも使用する映像作家であり、芸術論文・評論を書いているアーティストです。

拡大を続ける所得格差や侵略・虐殺・内戦、彼女が戦争ロボットと呼ぶ、定期的に恐らく計画的に戦争をもたらすアメリカの軍産複合体。

節税のために美術品が保管されるスイスなどにあるフリーポートと呼ばれる倉庫群にも言及して、アート界のシステムや既得権益そのものを批評し検証し続けています。

まるでロシアのウクライナ侵攻を予言するような活動も行っており、自著の論文や本、インタビューもアート作品として成立するということを示した点で画期的です。

専制国家権力への抵抗をアートで行うアイ・ウェイウェイ

ヒト・シュタイエルの次に紹介するのはアイ・ウェイウェイ(艾未未)です。

北京オリンピック『鳥の巣』の設計者であり、四川大地震の中国政府への対応などをアーティスティックに抗議して、当局から暴力を受けたり、拘束、自宅軟禁などを受けたりしているアーティストです。

彼らのような欧米のアートシーンのトップランナーは、新聞やSNSで話題となる政治の日常的な事件と表裏一体のように連結しています

つまり、美術は決して日常生活や政治・経済、政治体制と無関係なアミューズメントやエンターテイメントだけではないということですね。

この5年間で最も注目を浴びた作家がバンクシーです

オークションで落札された瞬間にシュレッダーの掛けられた作品で著名な、アートの富豪100人村に対して反抗的な態度のストリート・アーティスト、バンクシーがオークションでさらに売上を伸ばしています。

チャールズ・サーチに売る作品はないよ。彼に作品を売ることはこれからものない。」

と豪語するバンクシー。

チャールズ・サーチはイギリス最大のアートコレクターでサーチ・ギャラリーのオーナー。

この20年で世界のトップに君臨してきたサメや牛を半身に切断してホルマリン漬けにした作品でセンセーションを巻き起こしたダミアン・ハーストトレーシー・エミンなどヤング・ブリティッシュ・アーティストと名付けられたアーティストを育てたことで知られる現代アートの重鎮です。

大画商ガゴシャンを頂点とする100人村に、真っ向勝負で背を向けています。

私はガゴシャン専属契約作家の価値については大きな疑問をもっていますが、バンクシーの作品はいつも興味深いと思っています。

NFTアートが2021年対前年度比90倍以上の売上を挙げる

仮想通貨と連動するNFTアートが2021年NFTアート元年と言われ、対前年度比90倍以上の売上を挙げました。

NFTとはイラストレータなどで制作されたデジタルイメージ画像の著作権です

中心となっているのはNFT販売サイトである『OPEN SEA』で、特にタイラー・ホップスは注目されています。

参考サイト 『NFTアートが表舞台に躍り出た2021年、何が起きたのか?

こちらのARTnewsJAPANのネット記事でART BASEL(アート バーゼル)の調査では調査対象となった富裕層(HNW)コレクターのうち、実に74%が2021年にアート系NFTを購入したと報告しています。

彼らのアートへの支出額の中央値は4,000ドル(約360万円)で、そのうち3分の1強の9,000ドル(約133万円)がNFTアートに費やされたようです。

この動きに、日本随一のアート実業家である村上隆が乗らないはずはありません。

ところが、初回販売では準備不足だったと出品を取り下げ、再度挑戦するも今度は自分で購入して値を吊り上げるというインサイダー取引疑惑が起こりました。

その後の詳細は、私は知りません。

私の見解ですが、NFT作品は、いわゆるバブルだと思います。

というのは、ほとんどの作品のクオリティーが余りに低すぎるからです。

一気に信じがたいぐらいに高騰し、母子で作った何ということもないドット絵がNFTが高額で購入されてTVでも話題になりましたが、その後作品価格の全体平均値はどんどん下がっているようです。

かなり精巧なバーチャルリアリティー(仮想空間)の映像作品などは価値を持つでしょうが、小学生の作るドット絵などは私は価値がないと思っています。

購入はくれぐれも慎重にした方が良いと思います。