デッサン力は芸大受験予備校で身に付けよう。そうでないならコンピュータの力を借りよう!

 以前もお話しましたがミズマアートギャラリーの三瀦さんが

会田誠と村上隆がいうには美術教育が受験予備校だけで充分なのだそうだ

と著書で言っていますが、

デッサン力こそ画家としての実力を伸ばしていく上で決定的なものです。

「プロになるための美術教育は芸大受験予備校で充分」

というのは極論ですが、彼らがなぜそう話すのかはよく分かります。

経験上、画家としての実力は描いた枚数に比例していきます。

その画家修業の最初で、思いついたアイデアや構想を

イメージした通りに描く技量があれば、

完成作を観るごとにより良いアイデアが浮かんでいくものです。

これが、制作技術のレベルが低いと、完成作の稚拙さにガックリ

きて良いアイデアを思いつくどころではありません。

 見たものを正確に描画できる技術、頭に想像したものを

正確に描画できる能力がデッサン力です

 料理人で言えば、新たに思い浮かんだレシピを完璧に

実現できる知識・経験がデッサン力にあたるものです。


料理の基本がおぼつかなければプロの料理人として

活躍するなど、ちゃんちゃらおかしな話です。


 このデッサン力は、私の経験上やはり美術予備校で、

石膏デッサンや静物や花のデッサンの初歩から受験に

合格するレベルまでいかないと身に付かないものです

 デッサン修行の途中では当然、解剖学の知識も

学ばなくてはならないでしょう。

 ブルーピリオドという、東京芸大油画科卒の山口つばささんの

コミックは、ここら辺の事情を私たちに見せてくれるので私は大好きです。

 『泥棒美術館』という、国画会の佐々木豊さんが書いた本がありますが、

その中で

 「あらゆるものの中で、一番難かしいのは人物だ。

  人物が描ければ何でも描ける」

と書かれていますが、そうなのです。

  

 国民画家と言われて梅原龍三郎は

フランスでは師のルノアールに「お前の作品の手の描写は酷い」

と何度も言われ、本当に辛かった。」

と言っているのもこの意味でなのです。

 

 例えば若い女性の全身を描く時、

 人間は身体の各部分をよじらせて

 絶妙なバランスで立っています。

 これを観ながら描くのならまだしも、想像で描くのは困難です。

 

  何せ、日本人の女性のほとんどは8頭身ではないし、

逆にスーパーモデルには10頭身以上の人もいる。


 何頭身か?足の長さの割合がどれくらいかも人によって違うのです。

 ピカソは「美術教師だった父は、私によく、

「描かれた手を見れば画家の力量が分かるといっていた」

と言っていましたが、手は最も難しい部分で、

 だからこそモナリザは人を驚嘆させるのです。

 会田誠や山口晃といった当代を代表するデッサン家でも、

代表作を描くのにモデルを雇って描いています

 それぐらい人物像は難かししいのです。

 ◆もう少し分かりやすく、デッサンの修練の難しさについて説明しましょう。

①まず、公園や森林の木はどう描くのか?

 そっくりに描こうと思っても木の枝を全部描くことは不可能ですよね。


 とするなら、描く枝などを選択して描かなくてはいけない。


 ではどこをどう単純化するのか?

 さらに、ゴッホにしてもミレーやターナーにしても、

巨匠たちは自分の独自の木を描くスタイルを持っています。

例えばゴッホの糸杉とか。

そうすると、木をどのような目的でどのようなスタイルで

描くのかを考えなくてはいけません。

プロが描く作品は、ゴッホのあの線描スタイルがそうなように、

巨匠の表現スタイル、つまり、ひと目みて

これはゴッホの絵だ!

これはルドンの絵だ!

 と分かるスタイルが必修なのです。

  これは音楽でも同じですよね。サザンオールスターズの

曲を聴いて「誰が歌ってるのかな?」ではまずいでしょう?

それはプロではないでしょう。

 「私はサザンの熱狂的ファンです」

 となるのは、桑田佳祐が際立った素晴らしい

表現スタイル=個性を持っているからです。


 ですから、プロになるにはここまで

到達しなくてはいけないです。

 一時的にネットや個展で売れたとしても、

基礎・基本が出来ていないので長く続かない可能性が高い。

 コレクターズという雑誌や美術手帖の『有望新人100人』

といった特集で取り挙げられた注目アーティストの80%

は10年後に筆を折っていると、これらの雑誌に書かれています。

 再度言いますが、見たものを、思い描いたものを正確に

描画できる能力がデッサン力です。

 

 結局、私は特に人物を描くデッサン力で芸大・美大卒

のようにはどうしても描けなかったのです。

 そこでどうしたのか?というと、私の専門である

コンピュータの力を借りたのです。

 私は作品制作でPOSERという3Dフィギアソフト

を使用しています。

 

 これで人物像をパソコン上で作り、これをイラスト作成ソフト

や原寸大に印刷してデフォルメ(変形)させています。

 今、受験予備校には通わない。でもプロの画家になりたい

というなら迷わずPOSERをお勧めします。

POSERは、例えばGANTZなどの制作で多くの漫画家が

使用しているようです。

 一つ注意点があります。

 POSERは今もですがイ―フロンテアという会社が

販売していますが、この会社は売りっぱなしでまったくサポートがありません。

 電話番号も公開していないのです。

 

 2年ほど前、ソースネクストが販売権を取得したようなので、

恐らくここから購入するのが良いのでしょうが、

あくまで自己責任でご購入ください。

 次回は、どうしたら作品の主題や発想を次々と生み出せるのか?についてです。