今日は。北海道札幌市在住のパステル画家、横田昌彦です。
これから私の専門であるパステル画の描き方について初心者の方や、パステルでの絵画制作でより知識・技術を深めたい方のために解説していきたいと思います。
今回はその第1回目です。
まず、世の中でパステル画を描いている方は多いですが、どうも一つの先入観に囚われている方が多いように思います。
もちろん、パステルをどう使用しようと自由なわけですが、思い込みでパステルの表現可能性を狭めているように思います。
パステル描線の粉っぽさにこだわる必要はありません。
最も有名なパステル専用紙はキャンソン社のミタント紙でしょう。
ミタント紙は片面に斑点に近いような凹凸があり図のようにパステルを塗ると、ムラができます。いっぽうその裏面はこの凹凸を抑えてありフラットです。
このムラをパステルらしいと好む人が多いように思います。
それは好き好きなので良いのですが、パステルは写実に向かない画材ではありません。
一部では「重ね塗りに向かない」と書かれた説明もありますが、そうでは無いと思います。
私は何重もの重ね塗りをします。
絵肌の強度と言っても、最後はフィキサチーフ(定着剤)を吹き付けて定着させるので、さほど問題にはなりません。
このミタント紙ですが、名前の刻印のある凹凸のある方が表という人もいますが、そんな事はないですよ。
好きな方を使えば良いのです。私はもちろんフラットな方を使用します。
もっぱら使用しているのはマーメイド紙。何回もの消しゴムでの消去に耐える耐久性が秀逸です!
私が制作に使用している紙はミタントではなくマーメイド紙です。
表面がミタントよりフラットで凹凸が少なめ。
紙が厚くそれでいてソフトパステルの乗りも申し分なく、何といっても、消しゴムで何回も描いた線を消してもけば立たず、穴が空かないという抜群の強度を持っています。
水張りしてパネルに張った感じは、ちょうど和太鼓の皮のような感じです。
紙の説明を引用してみますね。(参照ページはこちらです)
「製紙工程で織り模様のついた特殊なフェルト(毛布)を用いることで紙の表面に転写される風合いを、フェルトマークと呼びます。
デザイナー 原弘氏(1903-1986)の監修のもと1956年に誕生したマーメイドは、国産の機械抄きフェルトマークのファインペーパーです。
穏やかな波のようなこの風合いから発売当初「マーメイド・リップル」――人魚の住む海のさざ波――と呼ばれ、1960年代に「マーメイド」として定着しました。
1999年、グラフィックデザイナー 田中一光氏(1930-2002)による監修で豊富な色と厚さをもつ銘柄として確立され、2019年、6つのカラーテーマのもと、全60色を3種の厚さで揃えたより体系的なラインナップとなりました。
心躍るような色と風合いは、プロフェッショナルからパーソナルユーザーまで、幅広い方々に愛されています。」
この混入されているフェルトが強靭さを生んでいるんでしょうねえ。
積極的に下地の色を生かしましょう!
先の説明にもあったようにマーメイド紙は60種類もの色が用意されています。
パステルではこの下地の色を利用する事が優れた作品を制作するためのコツとなります。
例えば私の作品でいえば『レオナルド・ダヴィンチ 礼讃 Ⅱ』では裸の女性の肌の美しさを際立たせるため肌色の紙を使っています。
一方、『カラスアゲハ』(写真)ではカラスアゲハの濃藍色とメタリックなブルーの輝きを実現するため濃紺色の紙を使っています。
こうすることで、パステルでより薄く描線して、必要最小限の描線による洒脱さ、洗練された絵肌を実現する事ができます。
和紙にも描けます。色んな紙を試してみましょう。
皆さんは何も私にならってマーメイド紙を利用する必要はないのです。
以前、ドガのパステル画を美術館で観ましたが、ある絵画は段ボールのようなボール紙に描かれていました。
パステルは阿波紙ファクトリーなどの和紙にも描くことが出来ます。
特にインクジェットプリンタ―用の新開発用紙は表面に特殊コーティングしているのでパステル用紙や水彩用紙のような強靭さとパステルの乗りの良さを持っています。
それぞれの紙は紙自体が沢山の魅力を持っていますので、色んな紙を試すことで新しい魅力的な表現が実現すると思います。
より新しい紙を探して使ってみることもパステル画での制作の楽しみですよ。