注3

大学4年生の時に、いつも通り自分の部屋で『芸術とは何か?美術とは何か?』と朝から晩まで悩んでいるときに、突然夢の中でオディロン・ルドンの描いたオアンネスが表れました。
 オアンネスは、当時、フジテレビのアナウンサーだった東大卒の中村洋子さんの顔をしていました。オアンネスは怒ったように「ホラ!」とカンディンスキーの画集を私の前に放り投げます。放り投げられた地面は、透明な海の底のサンゴ礁のような風景に変わっていました。
 じっと画集に見入ると、それはカンディンスキーが描いた何艘かの船が描かれた抽象画で、その絵から 山下達郎の『ミュージックブック』という曲が聴こえています。画面は突然色盲検査の冊子となり、冊子の小さな色斑はみるみるうちに桜の花びらとなり部屋中に吹き上げます。
 少し遠くに神社の境内がありお祭りのようです。チャンチャカチャという軽快なテンポの演歌が流れています。
 演歌少女歌手がその演歌を唄っていますが、それは同じ中学の先輩だった藤圭子のようでもありますが、まだデビュー前で当時の私が知る由もない娘の宇多田ヒカルさんそっくりです。
 私は境内に駆け寄りますが、瞬時に場面は松前城に変わり、城の横の通路では紙吹雪が地面に吹き上げ、NHKの大河ドラマ、北条政子で『石原さとみ演じる静御前が、源頼朝と北条政子の前で白拍子を唄って舞った後』の場面のような、宴の後のような少し淋し気な余韻を感じさせられました。