「アーティストとは何かとという質問はフェアじゃない!」、実は皆芸術とは何かをわかっていない。(抜粋 現代アートの舞台裏 ランダムハウス講談社 p77) 

現代アートの舞台裏 ランダムハウス講談社 ロサンゼルスでの滞在中、私はあらゆる人たちに「アーティストとは何か?」と尋ねて回った。

人々の反応はとても攻撃的だった。
 
 私は、これは何かタブーを犯しているに違いないという結論に達した。

 学生にこの質問を向けると「フェアじゃないよ!」と声を荒げた。
 「無茶な質問だ!」と叫んだ学生もいた。
 
 ある大学の美術科で要職を占めるアーティストは、私を「馬鹿者」とののしった。

 「いやあ、あんたの質問はどれも同語反復に等しいようなやり方でしか答えられないものですな。
 つまり私にとってアーティストとはアートをつくる人間なんです。
 循環論法なんです。だからアーティストに会って始めて、アーティストの何たるかがわかるのです。」

 気を悪くする人間が一人でもいたということが、レスリー・ディックには信じられなかったようだ。

 「アーティストの仕事って実は遊びなのよ。ただし思いっきり真面目な意味でね。」

 「二歳の子供が積み木で塔の作り方を発見するのと同じ。片手間で出来ることではないわね。
 自分の内面にある何かをつかまえ、それから自分を解放するために、捕まえたものを外に世界に吐き出すのよ。」