今日は。
札幌のパステル画家、デジタルアーティストの横田昌彦です。
今日は、私の販売しているジークレー版画の制作方法と制作価値についてお話いたします。
別な記事で『版画の種類と特徴』についてお話しましたが、ジークレー版画はインクジェットプリンターで紙やキャンバス、板に印刷した版画です。
私が自宅のアトリエで制作するのはA#版の大きさまでの版画で、CANON PIXUS PRO-10sプリンタを使用して印刷しています。
このプリンタは顔料プリンタですが、顔料とは日本画の岩絵の具がそうなように、宝石のような岩石を細かく砕いたものです。
元が岩石なので日光による変色に強いのです。耐光性はメーカー発表で200年となっています。
なぜ、CANONのプリンタを使用するのかというと、実はこの分野で先行したのはEPSONでした。
年代は2004年前後で、グラフィックデザイナーの原田泰治さんの作品を『ピエゾグラフ』という技術名で、EPSONが大型顔料プリンタで印刷。『ピエゾグラフ 原田泰治の世界』といった名前で、札幌でも展覧会が開かれました。
その頃、EPSONはMAXART PX-5800(8色染料)と、PX-G5100(10色顔料)というA4版まで印刷できるプリンタを発売しており、私はそのPX-G5100という顔料プリンタで自分の油彩作品をフィルムカメラで撮り、CANOBのフィルムスキャナーGX-800でスキャンしてジークレー作品の制作を試行錯誤していました。
ジークレー版画は出来たのですが、当時はネットがあまり発達しておらず、私のネットへの知識を乏しかったので販売のしようがありませんでした。
この頃、Canonはこれに匹敵するプリンタを持っておらず、必死に開発していましたが悪戦苦闘しており、発売時期が何度も延期されていました。
EPSONとCANONではインクジェットの方式が違いEPSONは圧電素子方式を取っており、これが当時の圧倒的な描画性能をもたらしていたのですが、この方式には今でも欠点があります。それは、とにかくインクヘッドの目詰まりが酷い事。そして、目詰まりしたときにヘッドクリーニングで高価なインクを大量に消費することです。
およそ3年前、再びジークレー版画の制作に挑戦したときにCANONを選んだのは当然です。
すでにCANONの技術は熟成されておりEPSONの圧電素子の欠点が無かったからです。
現在私のジークレー版画の印刷用紙はPIXUS PRO-10s専用に開発された,strong>『CANON 微粒面光沢 ラスター』を使用しています。
用紙の選択については、CCANONのPIXUS PRO-10s用に用意された用紙や和紙にインクジェットプリンタで印刷できるように独自コーティングした『阿波和紙』、インクジェットプリンタ印刷用紙として著名な『ピクトリコ』など様々な用紙に実際に印刷してみた結果、最も発色が自然かつ忠実で、原画の持つ迫力を最高度に再現できたのがラスターだったのでこれを採用しました。
ラスターはフラットな光沢面ではなく、表面に細かい孔(点)があり、それが印刷された作品に版画としての絵肌(マチエール)と驚くほどの高級感を与えてくれています。
A4版以上のジークレー版画の制作方法のご説明
A4版を越える版画については、専門業者に委託して制作してもらいます。
代表的な業者さんに『株式会社 グラフィック』さんがあります。
こちらの業者への委託では、印刷用のデータ画像をメールで送り、制作と送付は業者さんにまかせます。
私の作品の場合は『108cm×75cm』など原画と同じサイズを販売、ご送付しております。
耐光性などの品質は小サイズのものと同等です。
こちらの作品もシリアルナンバーと証明書も添付しております。
このジークレー版画ですが、もちろん私の作品も今年に入って売上を上昇させていますが、ようやく一般の版画と同等かそれ以上の資産価値を認めていただけるようになりました。
よく売れるようになった原因には、ここ数年の日本でのIT実業家を中心とした現代アートの購入と投資熱もありますが、コロナ化での自宅自粛もあり、自分の部屋や今に飾って鑑賞したいという方も多いです。
実は、お子さんや親戚の方へのプレゼントとして購入される方が多いです。
それば、私の『レオナルド・ダヴィンチ 礼讃 Ⅱ」などの作品を眺めて、人間や人生についていろいろと想像・思索を巡らして人間的に
豊かな教養を身に付けてほしいと願っておられるようです。
これは、販売している私としても本望で、大変うれしく思っています。
複製絵画である版画の資産価値と
複製芸術である版画の資産価値については別な記事『芸術品としての版画の資産価値』で説明させていただいていますが、先にお話したように版画、特にジークレー版画が非常によく売れるようになってきています。
知人のZIN画家さんも、基本的には原画は売らない方針で原画の同サイズのジークレー版画を販売していますし、原画よりも売れていると語っています。
ここ数年、欧米の特にドイツではジークレー版画が非常に売れているそうです。
これも、版画の資産価値が一部の版画の値上がりもみてなのか広く認知されて来ているからだと思いますが、ここに来て似たような動きに『NFT』が出て来ました。(参照 『NHK ビジネス特集 デジタルアートが熱い! コレクターに聞いてみると… 』
TVなどでも何度も紹介されていますが、NFTはデジタルアート作品などの場合、一点物として販売するのが難かしかったのですが、その所有権を譲渡し、その権利以外の複製(コピー)に所有権を認めないというものです。
当然ながらこの所有権は転売可能ですし、転売するごとに原作者にも何%かのお金が入って来る仕組みも組み込み可能で、色んな人がそういった販売方法を研究、実現しています。
NFTとは別に、複数の人が1点物の絵画や複製絵画を所有するサービスが新しく登場してきました。
共有者は作品鑑賞など優待あり、所有者間での売買も可能になるサービスも組み込もうとしています。(参照 「「アート作品の共同保有を根付かせたい」日本初アートプラットフォーム『ARTGATE』に込めた思い)
これは株式に良く似ていますね。
NFTはビット・コインを実現しているブロック・チェーンという技術によって実現されています。
支払いも現金ではなく、ブロックチェーンの技術を活用したイーサリアムなどの暗号資産を通して購入します。
ブロック・チェーンとは元の所有者は転売によって新たな所有者となった人による所有物への証明文書の連鎖で、暗号技術により改変が不可能とされています。
ジークレー版画も原画の所有権の共有とも見なせますよね。
ジークレー版画と台頭するNFT。
今後は新たな展開があるかもしれません。
(参照 「話題の「NFTアート」を実際に購入!世界最大のNFTマーケットプレイス「OpenSea」を使ってみた」)