パステル原画の購入相談について
私、横田昌彦は現在パステルで描いた原画を販売しておりません。その理由をご説明したいと思います。
実は、この文章を書く時に調べてみて改めて分かったのですが、私が絵を売らない理由は岡本太郎の『絵は売るものではない』という信条とほぼまったく同じでした。
それではご説明しますね。
- 一つめの理由は、近い将来に開催するであろう個展で展示する作品を手元に置きたいという理由がひとつ。
- 二つめの理由は、販売した作品が市場で値上がりしていった時に作者には一円の利益も還元されないことへの強い疑問があるからです。
この点についてはここ数年、ブロック・チェーンの技術を使用して解決できないか?と多くの人が解決に向けて努力してくれています。 - 三つめの理由は、岡本太郎が生涯貫いた通り、『絵は売るものではない』という考え方からです。
これはバンクシーも同じ考えを持っていると思いますが、優れたアート作品がたった一人の購入者のみに日々鑑賞されることへの疑問です。作品が優れているなら、出来るだけ多くの人々に鑑賞されることがより望ましいのではないでしょうか?
岡本太郎のポリシーは、彼を相当な経済的な苦境に追い詰めたようです。
そのため岡本太郎はTV出演やインタビューなど芸能や文芸関係の仕事で収入を得ていきました。
しかし、結果として岡本太郎の作品の多くは自宅に残されたため、いつでも大規模な展覧会を実施して多くの人に鑑賞してもえるようになったのです。
- 四つめの理由は芸術作品は音楽のように、できるだけ多くの大衆に手軽に安価に楽しまれるべきである。という考えからです。
私がジクレー版画の販売に力を入れている最大の理由はこれです。私はビートルズやローリングストーンズなどのロックミュージックや山下達郎など日本のポピューラーミュージックから多大な影響を受けてきた人間なので、こういったビジネスの姿勢を取っているのです。
しかしそれでも原画を購入したい方がおられます
しかし、最近、「そうではあっても是非パステル原画を購入したい!」という方からの問い合わせが増えてきました。 また、「このようなサイズでこのようなパステル作品を描いてほしい。」とか、アクリル絵具や日本画絵具で描かれた作品を購入したいというご希望をお持ちの方もおられました。
そこでこれからは、双方の希望条件が折り合えば、新たに作品を制作してお渡しすることも含めてこれらの作品を販売したいと考えております。
しかし、先にお話した私の作品販売の方針がございますので、いきなり今所有する大サイズパステル原画を高額で販売という訳にはいかないかもしれません。
オディロン・ルドンは数多くの花瓶に生けた花の絵を描きました。
これらの花の絵はコレクターに非常に人気が高かったそうです。
ですから、まずはこういった比較的小サイズのパステル画をご相談の上描いてお譲りするところから始めるという風になるかもしれません。
原画をお譲りする条件
原画をお譲りする条件は以下の通りです。
- 購入してすぐ転売したり投機目的でオークションに出品しないでください。
- パステル画は光に弱いため、直射日光が当たるような条件のところで飾らないでください。
- 横田昌彦の大規模な個展の際、貸し出しをお願いした場合、極力ご協力していただきたいと思います。
これらの条件は物を販売するビジネスマンとして、非常に勝手な言い分と思われるかもしれません。
しかし、日本の現代美術の攻勢を支えて来たプライマリーギャラリー(契約アーティストの新作や在庫を販売するギャラリー)の一つである小山登美夫ギャラリーの小山さんも著書でほとんど同じ事を話されています。
小山さんは作品を販売する時「すぐに転売しない」ことを条件に作品を譲るそうです。
それでも購入後すぐに転売する人がいるそうです。
これが金や株式、外国為替なら問題ないでしょう。
しかし、ただ転売や将来の値上がりだけを期待してお金儲けだけが目的で購入するのは、心が淋しいと思うのです。
お金では手に入れられない心の潤いを得るために購入するのに、金儲けのために購入するのは逆ですよ。
以前、TV番組の奈良美智特集で、アートフェアに小山登美夫ギャラリーが展示したブースの作品を丸ごと買いたいと言ってきた外国人客が作品を観ているところを、こっそり陰から見ていた奈良さんが「バッカじゃないか!」といって苦笑いして呆れていましたが、今は私も彼のその気持ちがわかります。
世界No1ギャラリーとして君臨してきた『ガゴシアン』も、購入者希望者は自由に作品を選べませんし、ラリー・ガゴシアンが選んだ作者の作品への購入打診でしか購入できないそうです。
世界の有名ギャラリーは、作品を大切に保管してくれた実績のある良客にしか作品を売りません。
大金を出せばすぐに自由に買えるというものでは無いのです。
もちろん、好きだから買うけど将来の値上がりも大いに期待しており、それも目的である。という方であれば喜んでお譲りします。
◆また、原画は経営する札幌WEBプログラミングスクールの教室にてご希望の作品を鑑賞していただけますので、こちらも気軽にこのフォームにてご相談ください。
ルドン、ドガ、ラ・トュ―ル、矢崎千代二しかいない。 歴史的に極めて希少な大画面のパステル画を描いた画家。
大画面のパステル画を描いた巨匠といわれ画家は、長い美術の歴史ではモネやセザンヌ、ルノアールなどが活躍した印象派時代のオディロン・ルドン、踊り子の画家として有名なエドガー・ドガ、16世紀に生きたモーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール以外にはいないと思います。
日本では大正・昭和に生きた矢崎千代二が代表的な作家で日本最初のパステルであるゴンドラパステルを共同開発もしています。
パステル画家がなぜ少ないのかは、私にもはっきりとは分かりません(笑)。
むしろ、今はアクリル絵具全盛の現代ですが、なぜ皆パステルと色鉛筆で描かないのか?が不思議です。
なぜ、私がパステルと色鉛筆で描くのか?
一番大きな理由は日本画の岩絵具や水干絵具(すいひ)で表現できる、日本美術の鮮やかで繊細で叙情的な色彩を簡単に表せることです。
ルドンとドガも日本の浮世絵に多大な影響を受けています。
本江邦夫氏が「天性の才能としか言いようがない天上的色彩」と称したこのルドンの色彩は油絵具では実現しづらいのです。
さらに、ドガは油絵具の粘性やテカリのある絵肌を嫌っていたようで、ルドンも同じだったのではないでしょうか?
実は私も40歳になるまでは、油絵具とアクリル絵具、一部岩絵具や水干絵具で描いていましたが、やはり日本人であるのでしょう。
この油や水で絵具を溶いて筆で描くのことは、どうにも制御しきれないのです。
上のルドンの『レオナルド・ダ・ビンチ 礼賛』の写真をご覧下さい。
実に日本画に似ていますよね。
実は狩野派や琳派などの日本画の巨匠の絵はもっと地味な色彩なのですが。
日本美術界の天皇と言われた梅原龍三郎は「ルドンの絵は日本的で非常に美しいものである。売らんかなという精神が感じられず、とても純粋で上品なものだ。」と言っています。(梅原著 天衣無縫より 求龍堂)
その梅原龍三郎も傑作『北京秋天』を描いた北京滞在の時ぐらいから「油絵具より岩絵具の方が美しく感じる」と岩絵具を使用した日本画に移行しています。
実はルドンの生きた時代のパリに、東の横山大観、西の竹内栖鳳と称された竹内栖鳳と、彼が率いた京都画壇の菊池契月や土田麦僊、小野竹喬がパリに行ってルドンのパステル画やデッサンを何枚も購入して持ち帰っています。
当時はまだルドンはパリでも評価が定まっていなかった時で、美術学者の本江邦夫さんは「驚くべき先見の明である」と評しています。
京都画壇の画家達はヨーロッパの画家たちの絵に直面し、次の時代の日本画を模索して苦しんでいたようで、それを打開するヒントが「日本画のような色彩で自由に抽象的な線を描いているルドン作品」だったのではないか?と考えられています。
どうですか?日本と西洋の色彩、美術の融合・統合をめざすという目標からすると、紙にパステルで描くことは非常に理にかなっているのです。
むしろ、これ以上に適した画材はない。ただ、その堅牢度が著しく劣るため特に大画面作品の制作には向かないの欠点です。
皆さん、ルドン、ドガ、ラ・トゥール、矢崎千代二以外に大画面のパステル画を描いた巨匠がいますか?
いませんよね。
私の描く比較的大サイズのパステル画がいかに美術史的にも、そして現代でも希少なものなのか?お分かりいただけたと思います。