有力画商と知り合い、取扱い作家になる事の天文学的な難かしさ。【My History No6】
佐賀町エキジビット・スペース 

アートは資本主義の未来を予言する 
 日本だけでなく海外でも有力画商と知古になるという事は非常に難かしいです。

 東京芸大の美術学部は毎年日本一の倍率で、入学するのが日本一難かしい大学と言われて来ました。

 画壇の勢力図が保守系から現代美術に一気に変わっていった2000年前後のあの時代、高校生で画家をめざし、芸大や多摩美、武蔵美に合格した学生のほとんどが東京画廊のような有力現代美術画廊の取扱い作家になることをめざしたと思います。

 東京芸大卒の福田美蘭さんが、当時こう話していました。

 「私の周りの芸大生も公募団体には応募しないし、美術関係者に相談しても応募するメリットは何もないと皆さんいいますから。」

 ですから、彼らも一度は電話をして東京画廊のような有力な現代美術画商にアポイントを取ろうとしたと思いますが、何せ全国の美大卒業生の数はもの凄く多い。

 なので、東京芸大美術学部をめざした人が、これらの有力画商と知古を得て、さらに取り扱い作家になる確率は宝くじの一等賞に当たるぐらいの確率となります。

 山本さんも

 「全員に会っていたら死んでしまいますよ。他に何もできなくなります。」

 と言っていました。

 「ではなぜ私とは会ってくださったのですか?」と聞いたら。

 「あなたとは会ってしまったから。それとあなたとは何か不思議な縁を感じるので。

  もし、あなたが公募団体の会員などだったら会っていませんでした。

 とのことでした。

 当時の日本の主要な現代美術の画廊は東京画廊を筆頭として西村画廊、南天子画廊、佐谷画廊ぐらいしかありませんでした。

 しかも、佐谷画廊に尋ねて行った日が画廊最後の営業日で、そこで30分ほど佐谷和彦とお話をさせていただいたのを憶えています。

 ですから、この頃は現代美術画廊は土地バブルの後遺症もあって売上不振で苦境に喘いていたのです。
 

佐賀町エキジビット・スペース  写真
佐賀町エキジビット・スペース 

 村上隆と奈良美智を日本とアメリカで売り出した小山登美夫ギャラリー、会田誠や山口晃を売り出したミズマアートギャラリー、杉本博司、森村泰昌などの写真作品を扱うタカイシイギャラリーなどは創業してまだ5年ほどで今のような目立つ存在ではありませんでした。

 当時、江東区佐賀町に会った食料ビルディングが『佐賀町エキジビット・スペース』という名前で、小山登美夫ギャラリーやTAROU NASUなど、若手の現代美術ギャラリストの画廊が集まっていました。

 上京して売り込みに行って小山さんとすれ違いで会い、那須太郎さんに作品写真のポートフォリオを渡して2,3話したことを映画のように鮮明に覚えています。

 この時、小山さんは助手の若い女の人に「じゃあ、これ持ってマイアミ行って来ます」と、私とすれ違いで画廊から出ていき、しかたがないので助手の人にポートフォリオを委託しました。

 恐らく、その時が、まさに村上隆の作品をマイアミ・アートフェアなどで売りだしていった時だったのでしょう。

 『佐賀町エキジビット・スペース』は情緒のあるとても良い雰囲気の建物でした。
 
 画家をめざしたのに無名の時代が長く続いたら、誰か経験豊富な有力な美術関係者に才能へのお墨付きをもらえないと心が折れるかすさんでしまうと思います。

 人間はそれほど強くはないですから。

 追伸
 なぜ、山本さんが「公募団体の会友や会員だと会わなかっただろう」とおっしゃったのか?
 長く美術をやっていれば、日本や海外の業界情報にそれなりに詳しくなりました。
 私の推測ですが、これは恐らくこういう事でしょう。
 芸大や美大に入る最大のメリットの一つは縁故・人脈に繋がれるという事です。
 そして、長く芸大や美大の教授陣は有力団体の会員でした。
 ですから、芸大生や美大生の多くはゼミの教授の公募団体に卒業してすぐ応募していたのです。
 平山郁夫の門下生なら院展に、絹谷幸二ゼミの卒業生なら独立美術に。
 ですから『絵の世界は学歴不問の実力主義』と言われて来ましたが、医者の世界のような
 学閥は否定しがたくあると思います。

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